あるところに、釈迦が多くの人たちから尊敬される姿を見て、ひがんでいる男がいました。

「釈迦の野郎、きっと、おれに悪口を言われたら、汚い言葉で言い返してくるだろう。その様子を人々が見たら、あいつの人気なんて、アッという間に崩れるに違いない」

男は、釈迦の前に立ちはだかって、ひどい言葉を投げかけます。

釈迦は、ただ黙って、その男の言葉を聞いておられました。

弟子たちはくやしい気持ちで、「あんなひどいことを言わせておいていいのですか?」と釈迦にたずねました。

それでも、釈迦は一言も言い返すことなく、黙ってその男の悪態を聞いていました。

男は、一方的に悪口を言い続けて疲れたのか、しばらく後、その場にへたりこんでしまいました。

どんな悪口を言っても、釈迦は一言も言い返さないので、なんだか虚しくなってしまったのです。

その様子を見て、釈迦は、静かにその男にたずねました。

「もし他人に贈り物をしようとして、その相手が受け取らなかった時、その贈り物は一体誰のものだろうか」