嘘を愛せる

それほど幸せな事もないでしょ
どんな宝石よりも綺麗なもの

「ふっ…」
吐いた溜め息に少し懐かしさを覚える
まだ少しの間、この世界の暖かさを信じてみようか
春風に包まれて、この温もりの中で
まだ世界を愛してみようか
あの頃のように

蹴り飛ばした空き缶が乾いた音を立てた
高架下
見上げる先で誰かが言う
「諦めるな。走れ」
そうだよな
私はこの世界を生きている
時間はいつだって流れる
ノスタルジアなんてもう嫌いだ

楽譜と睨めっこするのやめた

狭い世界で考えた事になんて意味ないわ
ここを飛び出せば世界は変わる
世界なんて私から見たものでしかないでしょ?
もう少しだけ自由に我儘に生きてみようかしら
これはわたしが主人公の物語