夏の終わりに怖い話する。
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小学生の頃のワイは、ちょっとだけ荒れてたんや。
ワイが物心つく前にパッパとマッマは離婚して、マッマは女手一つでワイを育ててたんや。
マッマから愛情をもらえなかったわけやない。 マッマはワイら姉妹のために朝から晩まで働いてたし、きちんと育ててくれてたんや。
しかし、イモオットが病気がちだったから、片親で仕事にかかりっきりだったマッマがワイに構ってくれる時間はほとんどなかったんや。 いつもマッマがお世話するのはイモオットばっかで、「お姉ちゃんだから我慢して」と口癖のように言っとった。
多分これが寂しかったんやろうな。
ワイは子供ながら自分の環境が嫌でたまらなかった。
少しでも誰かに構ってもらいたかったんや。 だからワイは「万引き」という犯罪に手を染めかけていたんや。
最初に魔が差したのは、学校の近くにあった駄菓子屋やった。
ワイはそこで店の婆さんが見ていない内に、チョコを1個万引きしてもうた。 一番最初に感じたのは万引きするときのドキドキの高揚感や。
そして万引きをしてバレなかったことで、安堵とともに変な達成感のようなものを感じてしまったんや。
もちろん、罪の意識はあったで。
店で物を盗むってことが悪いことやという認識は十分にあったんや。 やけど、ワイは一度この万引きが成功して、もう一度この高揚感のような達成感のようなものを感じたくなってたんや。
おそらくワイはあれを続けていたら、今頃万引き常習犯になっていたように思うわ。
消防のころからそんな犯罪 に手を染めて、捕まりでもしたら一生の傷になってたやろうな。 やがそうはならんかったんや。
理由はそうなる前に止めてくれる人の存在があったからなんや。
ワイはこの人に感謝しとる。感謝してもし足りないくらいや。
今振り返ってもあの日の出来事はワイには大きかったんや。
しかしや、ワイはその人に直接お礼を言えていないんや。 >>21
何故お礼を言えてないんですか?
ここが怖いポイント? ワイが二度目に万引きをしそうになったのは、マッマとよく行く街の小さなスーパーやった。
よくマッマに連れられて夕食を買いにこのスーパーに立ち寄っとた。
ワイはマッマがイモオットを病院に連れて行っている日に、一人留守番しとったんや。
その寂しさに耐えかねて、一人財布も持たずスーパーに向かったんや。 夕方一人でうろうろする小学生はそらぁ目立ったんやろうな。
オッヤもトッモも連れずに一人でいるのはかなり怪しかったと思うわ。 ワイはそんなことにも気づかず、駄菓子屋でやったときと同じように、万引きを企んでたんや。
ワイが欲しかったのは菓子パンやった。
大好きやったパンを手に取り、店の人が見ていない隙に、パンをジャンバーのポケットに押し込んだんや。 >>38
カレーパン、僕も好きです。
ちょっと辛くていいですよね! そんで、バレへんように店を立ち去ろうとしたんや。
しかしや、店を出てから駐車場を歩いているところで、肩を叩かれて声をかけられたんや。
そらぁワイはビビったで。
振り向いたら、大人が居ってワイは明らかに震えとった。
万引きがばれて怒られると思ったからや。 予想と違ってその人はワイのことを睨みもせんし、怒ってもなかったんや。
すんごい優しそうな顔でニコニコしとった。
だからワイは最初万引きがバレてへんと思ったんや。
しかしや、その人はおもむろにワイのジャンパーからパンを取り出したんや。 「あ…」とちっさい声が出たと思うわ。
今度こそ怒られると目をつぶったワイやったが、その人は怒りも、殴りもせんかった。
ただ「盗みは悪いことだよ」と優しく諭してくれたんや。
ワイはその人を見たことがあったんや。
いつも行くあのスーパーで働いとる人やということが分かったんや。 やがその人はワイを警察に突き出したり、店に連れ戻して叱るなんてことはせんかった。
店の近くにあった公園のベンチで、ワイの話を聞いてくれたんや。
ワイが家でどれほど寂しい思いをしとるんか、マッマがイモオットばかり構っていることでどれだけ孤独を感じてたんか、そして一度駄菓子屋で駄菓子を盗んでしもうた話をただ静かに聞いてくれたんや。 >>54
その店員さんは大きな器を持った人ですね。 そんあと、その人はワイと一緒に駄菓子屋さんに行って、一緒に謝ってくれたんや。
店の婆さんは「それくらいいいわよ」と言ってくれたんやが、その人はワイの代わりにチロルチョコを弁償してくれて、赤の他人なのに一緒に頭まで下げてくれたんや。
そんで万引きがどんだけ悪いことなのかしっかりワイに教えてくれたんや。 ワイは泣いてしもうた。
あんまり人前で泣かないタイプの可愛いく無い子供やったが、この人の前ではすごく泣いた記憶があるわ。
翌日、万引きの話を打ち明けて、マッマと一緒にスーパーに謝りに行ったんや。
パンを万引きしたことを自分から話して、ごめんなさいを言ったんや。 マッマはひたすら申し訳なさそうに謝っとたが、なぜか私ワイを責めることはしなかったんや。
ワイはこうして万引き常習犯にならないで済んだんやが。
スーパーから出ていくときに、お店の奥の棚と棚の間、明らかに人が入れるような隙間が無いとこに、無表情でこっちを向いとるあの人がおったんや。 なんですか?
ここからが怖いんですか?
ヤバいです…。 昨日、ワイに向けてくれてた優しい笑顔は微塵もなく、ただこっちを見つめとった。
その表情にワイは急に不安を覚えてマッマのに抱きついて、あの人の方を見ないようにして店を後にした。 その後の数日間ワイはなんとも言えない気分やった。そんでワイは不安と孤独に我慢しきれず、マッマに自分の素直な気持ちを話したんや。
ワイが寂しいことを伝えたら、マッマが思いっきり抱きしめてくれて、何度も謝られたんや。
ワイはそれでようやく安心したんや。
私に厳しかったのは、マッマなりの愛やった。
厳しい環境でも生きていけるようにと、ワイに厳しく言い過ぎたと謝ってくれたんや。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています