エグイぜ

開設日に預けられたのは3歳児だった

2007年5月10日。赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が設置された。


それからわずか数時間後、病院職員は驚愕する。最初の子どもが預けられたのだ。

「赤ちゃん」ではなく、3歳児だった。キョトンとしてベッドに座っていた。男児は「新幹線で来て、お父さんにかくれんぼしようと言われた」と話したという。

当時を知る関係者によると、児相に保護された男児は、職員に「今日はここにお泊まりしようね」と言われると、「嫌だ。おうちに帰る。おうちに帰る」と言って激しく泣き続けた。

自分の靴を靴箱に入れず、手に持って離さなかった。どうしても離さないため、靴をビニール袋に入れて男児の服にくくりつけた。

部屋の入り口の扉が開く音がすると、「お父さんが迎えに来てくれた」と思って走って行き、靴を持って「帰る、帰る」と泣きながら訴えたという。関係者は「切なかった」と振り返る。

◆「お父さん」が迎えに来ることはなかった