0001風吹けば名無し
2023/07/24(月) 23:36:15.20ID:sMhoksHWp私は高校生の時に交通事故に遭った。自転車で横断歩道を渡っていたら、赤信号を無視した車にひかれてしまったのだ。私は意識を失って病院に運ばれた。幸いにも命に別状はなかったが、頭を強く打ったために記憶障害が起きた。事故の直前のことや、その日の朝のことなどが思い出せなかった。
私はリハビリをしながら、少しずつ記憶を取り戻していった。事故の直前には、友達と話していたことや、学校での授業のことなどが思い出せるようになった。でも、その日の朝のことだけはどうしても思い出せなかった。私は何をしていたのだろうか。
ある日、私は母親にその日の朝のことを聞いてみた。母親は少し困ったような顔をしたが、答えてくれた。
「あの日の朝は…あなたは早く起きて、お父さんと一緒に散歩に行っていたわ。」
「お父さんと?」
「ええ、お父さんとね。」
私は不思議に思った。私はお父さんと仲が悪くて、一緒に散歩なんてしたことがなかった。お父さんは私に厳しくて、よく怒鳴っていた。私はお父さんが嫌いだった。
「お父さんと散歩に行ったなんて信じられない…」
「そう言わずに…あなたはお父さんのことを好きだったのよ。」
「好きだった?」
「ええ、好きだったわ。だってあなたは…」
母親は言葉を切って泣き出した。私は驚いて母親を抱きしめた。
「どうしたの? 何で泣くの?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
母親はしばらく泣き続けた。私は何が起こっているのか分からなかった。
やがて母親は落ち着いて、私に話してくれた。
「あなたは事故でお父さんを失ったのよ…」
解説
私は事故でお父さんをひいてしまった。お父さんは死んでしまった。私はそのことを忘れてしまった。母親は私を守るために嘘をついてくれた。私は轢かれたのではなく、自分が轢いたことにショックを受けて記憶喪失になったのだ。自分がお父さんを殺してしまったという罪悪感やトラウマが、記憶を遮断したのだ。