韓国の路上には高級輸入車が増えた

2023年1月に約6年ぶりに韓国の首都ソウルを訪れ、街を走るクルマをウォッチしていると、日本車以外の(韓国と日本はいろいろあるので)、欧米系外資ブランド車を多く見かけた。シボレーやフォードなど、日本よりアメリカンブランドがもともと多く正規輸入されていることもあるが、それにしてもアメリカンブランド車はけっこう多く、そのほかにもドイツ系を中心にフランス系やイタリア系など、さまざまな外資ブランド車が多いことに驚かされた。

たまたま、韓国ヒョンデ自動車関係者と話す機会があった。「日本で乗っているクルマは?」と聞かれたので「カローラです」と答え、こちらも「そちらはどうですか?」と聞くと、「BMW 3シリーズセダンに乗っています」と答えてくれた。

自動車メーカーやメーカー系正規ディーラーに勤務しているからといって、とくに新車ディーラーのセールススタッフでは、自社が扱うモデルに乗らなければならないのは、日本ぐらいといっていいだろう。

かつて南カリフォルニアの日系某ブランド系新車ディーラーを取材したとき、そこの店舗責任者であるゼネラルマネージャーが得意げに「最近買ったBMW 7シリーズだ、いいだろう」と自分の愛車を紹介してくれたときには驚いた。

そこでは、ディーラーとメーカーがそれぞれ自社車両をリースで乗るときに月々リース料金について上限額を設けて折半で負担しているとのことで、それほど高くないモデルなら、個人的な支払いなしで新車に乗ることができたそうだ。

「それでも、受け付けの若い女性などが喜んで乗るぐらいです。仕事とプライベートは違います」と、そこのセールススタッフに言われ、これにも驚いてしまった。韓国でも仕事とプライベートは分けているようであった。

北米・欧州で評価されるヒョンデの高級車ブランド「ジェネシス」
ただ話を聞くと、外資ブランド車に乗るのは都市部に住む若年富裕層やヒョンデのような財閥系企業に勤める若年エリートなどが多いと言ったことを、話を聞いた関係者が話してくれた。さらに、「比較的年齢層の高い富裕層はジェネシス車に好んで乗りますよ」とも教えてくれた。愛国心が高いというか、韓国メーカーの高級ブランドということで、ソウル以外でも広く乗られているようだ。事実、ソウル市内ではとにかくジェネシス車を多く見かけることができた(北米で見かける頻度の10倍以上といっていい)。

ジェネシスとは、ヒョンデ版レクサスといっていい、韓国・現代(ヒョンデ)のプレミアムブランドとなる。そもそも韓国国内で、ヒョンデブランドのラインアップのひとつ、つまり車名として「ジェネシス」は始まり、その後2015年に独立したブランドとなった。

トヨタがレクサスをはじめたころと同じく、当初は北米市場に焦点を絞ってブランド展開を進めた。FF(前輪駆動)もしくはFFベースのAWDがメインとなるヒョンデブランドに対し、ジェネシスはいまもってFR(後輪駆動)もしくはFRベースのAWDのみのラインアップを貫いている。

前述した関係者が面白い話をしてくれた。「ジェネシスは北米のほかは欧州で展開しているぐらいで、中国や東南アジアなどでは展開する予定はありません」とのこと。そしてさらに、「中国や東南アジアではヒョンデブランドすらトヨタほどのステイタスはなく、認知もそれほど高くありません。そのなかでジェネシスを展開しても相手にされません」と説明してくれた。

欧州では母国韓国よりも早くニューモデルをリリースしているところを見ると、逆に欧州市場についてはヒョンデグループとしてはジェネシスブランドを展開する市場として自信のある地域ということになるのかもしれない。

日本市場への再参入を見ても、ヒョンデの動きは慎重なように見える。経営トップの代替わりが行われたばかりだが、先代のころの市場開拓はまずタクシーなどのフリート販売を積極的に行い、シェアを取ってから本格進出という、ある種のイケイケパターンが目立っていた。

事実、中国では北京はヒョンデの現地合弁会社「北京現代」のお膝元ということで、ヒョンデのタクシーも目立っていたし、ほかの大都市でも目立っていた(いまはBEVタクシーが積極導入されることもあり、中国メーカー車が目立っている)ことで、「タクシーとしていっぱい走っている」という消費者の反応もあり、販売シェアは確保できてもブランドステイタスが低迷していた。

さらに、2016年に韓国はTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備し、これに中国政府が反発して中国国内で大規模な韓国製品の不買運動が起き、ジェネシス参入のタイミングを逃したことも大きいといえるかもしれない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/475d9afd7adaf63bf2a28aedbad9722a1d77d4d0