「育て、依存させ、殺す」 台湾パインの活況は中国のワナだったか
高雄=石田耕一郎
2023/4/17 12:00
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR4G3W69QDPUHBI01W.html?oai=ASR4G538NR4CUHBI02H&ref=yahoo

組合員の陳冠竹さん(35)がパインの中国への輸出を始めたのは2017年だ。「中国とフィリピンによる南シナ海の領有権争いがきっかけだった」と言う。

 フィリピンは13年、国連海洋法裁判所に仲裁を提起した。フィリピンと台湾の統計によると、フィリピンからの対中パイン輸出は仲裁の前後で大きな増減を繰り返していた。これに対し、台湾産パインの対中輸出は15年以降に急上昇し、19年には過去最高の5万トン超に達した。

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 中国の国有企業などから大量の高値の注文が入ったためだ。陳さんは、こうした客から「台湾の農民を助けるため、台湾産パインを大量購入せよと政府から命じられている。生産量を増やして欲しい」と言われたことを覚えている。中国からの注文に応じるため、借金して畑の面積をそれまでの6倍まで拡大した。

 また、仲間の農家を説得して、21年1月に計約30人の協同組合をつくった。組合の耕作規模は計70ヘクタールと台湾でも最大規模だった。

 たった2カ月後のことだった。