「偏差値下がる」批判も一蹴 大学入試の「女子枠」なぜ必要?
2023/3/21 09:14 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230320/k00/00m/040/147000c


大学入試で「女子枠」を設ける動きが広がっている。背景には、理工学系に進む女子学生が少ないことや、日本の産業界が抱える危機感があるが、女子学生をいわば“優先的”に入学させようという取り組みには「不平等」との声も一部で聞かれる。なぜ今、入試の「女子枠」が必要なのか。大学や識者に話を聞いた。【岩本桜、北村栞】

「今アクションを起こさないと、将来、世界と対等に渡り合えない」

2025年4月の入学者から、全学院(学部に相当)で女子枠を設ける東工大の井村順一理事・副学長は、毎日新聞の取材にこう語った。

女子枠を導入するのは総合型・学校推薦型選抜で、24年度入学者は4学院で計58人、25年度は全6学院で計143人の女子枠を確保する。ただし、一定の学力水準に達する学生が募集枠を下回った場合は、残りの枠を一般選抜に回す。

井村理事は「一様なメンバーが集まっても似た発想しか出てこない」と語る。さまざまな発想を持った人が集まり、多様な意見に触れることによって、将来的なイノベーションの創出につながる可能性があると期待する。

東工大の学士課程の女子学生は22年5月時点で全体の約13%にとどまるが、女子枠の設置により20%を超えると見込んでいる。一方、募集定員の総数(1028人)は変わらないため、一般選抜の定員は930人から801人に減る。

名古屋大は、23年4月の入学者から工学部の学校推薦型選抜で計9人の女子枠を設けた。宮﨑誠一・工学研究科長は「ものづくりなどの現場では、男性だけでなく女性のニーズにも応えられるような発想が必要で、企業からは『工学系の女子学生がほしい』との要望がある。女子学生を育てることで女性教員も増やしたい」と話す。

同様の動きは各地で広がっており、島根大、富山大でも23年4月の入学者から導入された。