早稲田大学(早大)は12月27日、アト秒レーザーによりネオン原子から放出された電子の波動関数を、位相分布も含めて高分解能で可視化する方法を開発したことを発表した。

さまざまな分子(生体分子)やマテリアルの構造や性質は、その電子の状態が大きな役割を果たしており、紫外光よりも波長の短い極端紫外光や軟X線を物質に当てると、電子が放出されることが知られており、放出された電子の運動エネルギーや、どの方向に放出されたかを測定する光電子分光法は、物質の電子状態や構造を調べる方法として広く活用されている。

放出された電子は、粒子として観測されるが、測定を多数繰り返すと、ある形を持った分布となることが知られているという。この分布は、波動関数の自乗 |Ψ|2に相当するとされるが、電子の位相として表される(位相情報)もう一方の電子の性質である波動性(波としての性質)は、検出器に当たった時に消えてしまうとされてきた。

近年、アト秒の科学の世界において、そうした電子の位相を測定することが可能となってきており、研究チームでも窒素分子の分子軌道のイメージングに成功したことや、奇数次と偶数次を含むアト秒レーザーパルス列を用いることで、ネオン分子から放出された電子の角度ごとの位相を測定し、部分波にわける方法などを報告していたが、この部分波にわける方法では、電子の3つの干渉過程を用いるため、解析方法が難しく、角度ごとのみの解析にとどまっていたという

そこで今回の研究では、より簡単・直接的な方法で「角度ごと・エネルギーごとをあわせた運動量ごとの電子の位相と振幅を測定」し、「複素数の波動関数全体を可視化」する方法の開発に挑んだという。