「僕にはあります。あのロシアの軍勢を前に、勝利の絵を描く力がある」
「勝算は?」
「僕の読みどおりに戦局が動いてくれれば、九割ほどで」
僕の言葉に、ウクライナ人たちがどよめいた。
中央が防戦でもちこたえている隙に、こちらの精鋭部隊の右翼と左翼が敵両翼を突破。
そのまま敵中央の真横と背後につき、包囲網を完成させる。
包囲殲滅陣(ほういせんめつじん)。
これが、僕が描いた勝利の絵だった。

中略

こうして、300の手勢で5000のロシア軍を迎え撃ったドネツクの街攻防戦は終結を迎えた。
味方の被害は数えるほどに収まり、圧倒的劣勢ながらもロシア軍に致命的な打撃を与えた戦いは、大侵攻の全史を鳥瞰(ちょうかん)しても、この戦いが初のことだった。
この戦いで我とのが採用した戦術・包囲殲滅陣(ほういせんめつじん)は、対大侵攻用の最も効果的な戦型として、後世まで高く評価・研究されることになった。

時代を越える才能が、ここに誕生した
https://i.imgur.com/QAVS1XZ.jpg