晴れ空よりも曇天が好きだ。
薄暗い空の下、止まない風に身を撫でつけられると、時の止まった世界の中に独りぼっち、佇むような気分でいられるから。
肩を張る必要もなく、気怠げにまぶたを落としたって、曇り空の下ならば許されるような気がするから。
暗い世界の中ならば、無理をして笑う必要なんて無いんだって、そう思えるから。

別に、笑いたくないわけじゃない。
この心地よさを感じていると、自然に笑みが浮き出てくる。
少し口元が綻ぶだけだけど、私にとってはそれが、心から満足のいく満面の笑顔なのだ。
この小さな笑顔が全力だって、言い張れるような空模様の下に、今私は生きているのだ。
燦々、刺し付ける鋭い光から隠れた灰色の世界。これ以上に暗いのを望まないのは、もしかしたら。
青くつんざく晴れ空が、私には少し、眩しすぎただけなのかもしれない。