17歳のころ、「もういやだ!」「もう死ぬ」というスイッチが入ってしまったことがありました。そのときは、いじめられた記憶のフラッシュバックに加えて、ほかにもいろいろ嫌なことが重なって、死ぬこと以外を考えられない状態になっていたのだと思います。

ついに衝動的にリストカットをしてしまいました。少しずつ何度も深く手首を包丁で切りつけて、血が流れてくる。

 その最中に母が、たまたま階段を降りてきました。無心に手首を切りつけていたわたしを見つけると、あわてて駆け寄ってきて手首を押さえて血を止めてくれました。

 母は、いつも強く明るく、悩むことがあっても決してわたしには見せない人です。

 泣いているのを見たのは、父が亡くなった夜と葬儀の時だけ。ずっと働き続けていた母は、絶対泣かないしわたしには弱さを見せない強い人でした。

 その母が涙を流しながら、わたしを叱ったんです。

「バカ! なんでこんなことするのよ!」

 あのときの母を忘れられません。

 でもまたしばらくしてから、死にたい衝動がもう一度襲ってきたことがあります。そのときはドライヤーのコードで首を吊ろうと、ドアノブにぐるぐる巻きつけ体重をかけたのですが、目の前が白くなりました。

 すると、部屋に猫が入ってきて甘えてきました。

 最後に猫を撫でようかな、とわたしはフッと力を緩めて抱き上げました。猫を撫でているうちに、その衝動がおさまったのです。

 もしそのまま死んでいたら。

 本当にあのときに死なないでよかった、といま心から思います。

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