【速報】東大、反強磁性体「Mn3Sn」で異常ホール効果の符号が制御可能なことを実証
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東京大学(東大)は8月19日、磁化をほとんど持たないにもかかわらず、室温で巨大な異常ホール効果を示す、マンガンとスズからなる反強磁性体「Mn3Sn」において、一軸性の歪み(ひずみ)によって異常ホール効果の符号が制御可能であることを実証したと発表した。
MRAMのさらなる高速化や高密度化を実現する研究開発指針の1つとして、現在は強磁性体が利用されているが、それを反強磁性体で代替することが検討されている。その理由の1つは、反強磁性体では情報の記憶速度が、強磁性体の100~1000倍のピコ秒台になることが期待されているためだという。
また、スピンが互いの磁化を打ち消し合う配置になり正味の磁化を持たないため、従来より100倍速い演算が可能かつ高密度なMRAMが原理上実現可能であることも理由とされている。
しかし反強磁性体を用いるためには、「0」と「1」の情報に対応する電気的信号を検出・制御する技術の開発が必要とされていた。
反強磁性体では、異常ホール効果や異常ネルンスト効果、磁気光学カー効果などの読み出し信号を、これまで検出が困難だと考えられてきたが、Mn3Snを用いて室温で検出できることを実証してきたのが研究チームだという。これらの信号が得られる理由は、ノンコリニア(非共線)反強磁性スピン構造を示すMn3Snが、磁極に類似した拡張磁気八極子偏極を持つためだとされている。 そうした信号の制御手法としては磁場や電流を用いることが一般的だが、今回の研究では歪みに着目することにしたという。純良なMn3Sn単結晶試料に、引張方向と圧縮方向へ一軸性の歪みを高精度で、なおかつ幅広い範囲で加えることが可能な抵抗測定用圧電歪み測定ステージを開発。歪みによる異常ホール信号の変化を測定することにしたとする。その結果、室温においてMn3Snがピエゾ磁気効果を示すことが発見された。
通常、異常ホール効果などの電気輸送特性に観測可能なほどの変化をもたらすには、1%程度の歪みが必要だったが、今回の研究では0.1%程度の小さな歪みで異常ホール効果の作るホール信号を変化させることに成功したという。
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ホール信号は単に大きさが変化しただけでなく、その符号まで反転する振る舞いが観測され、Mn3Snでは歪みにより信号が高効率に制御できることが確認されたほか、Mn3Snでは、ピエゾ磁気効果により生じる微小な磁化とホール信号が、歪みによって別々に制御できることも実験と理論の双方から判明したとする。
なお、今回の研究で開発された、歪みによる反強磁性体の磁気状態を高度に制御する技術は、ホール信号の電気的制御をより高速、低消費電力で実現するための重要な指針となると研究チームでは説明しており、今後、MRAMをはじめ、さまざまな磁気デバイスを高機能化するための研究に、今回の技術が展開されることが期待されるとしている。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています