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なんJ 深夜のオーウェル「ナショナリストについて」を読む部
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0001風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:39:11.44ID:GKAucBkB0
(現代人の考え方に広く影響を与えているのに)まだ名前のついていない心の動きがある。その中のもっとも適当な例としてわたしは「ナショナリズム」という言葉を選んでみた。だが、わたしが問題にする感情はかならずしもいわゆる国家あるいは国民、つまり地理的な地域や一つの民族と結びついたものではなく、それだけでもわたしがこの言葉をかならずしもふつうの意味で使っているわけではないことは、すぐにわかってもらえると思う。
(中略)
「ナショナリズム」というときわたしがまっさきに考えるのは、人間を昆虫と同じように分類できるものと考えて、何百万、何千万という集団をひとまとめに、平然と「善」「悪」のレッテルを貼れるときめてかかる考え方である*。だが、その次に考えるのはーーそしてこのほうがはるかに重要なのだがーー自分を一つの国家あるいはこれに似たなんらかの組織と同一視して、それを善悪を超えた次元に置き、その利益を推進すること以外にはいっさいの義務を認めない考え方である。
0002風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:39:38.38ID:GKAucBkB0
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*[原注]国家とか、もっとあいまいな組織、つまりカトリック教会やプロレタリアートのようなものまでが、ふつうは個人のように見なされて「彼女」という代名詞を当てられることが多い。「ドイツは生来裏切者だ」というようなあきらかに馬鹿げた文句が、新聞をひらけばかならず目に入るし、ほとんど誰もが国民性についての無茶な一般論(「スペイン人は生まれながらの貴族である」とか「英国人はすべて偽善者だ」といったたぐい)を口にする。こういった一般論に根拠がないということはときどき思い出したように指摘はされるのだが、やはりその癖は抜けきれず、トルストイやバーナード・ショーのように自他ともに許す国際的視野の持ち主さえ、よくこの誤りを犯すのである。
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0003風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:40:28.23ID:GKAucBkB0
(中略)
ここで「ナショナリズム」という言葉を使うのは、ほかにうまい言葉がないからで、わたしの考えている広い意味のナショナリズムとは、共産主義、政治的カトリシズム、シオニズム、ユダヤ人差別、トロッキズム、平和主義といった運動ないし風潮までふくむのである。それはかならずしも一政府一国家への忠誠心であるとはかぎらず、まして自分の祖国への忠誠心である必要もない。
(中略)
ナショナリストとは、威信闘争という観点からしか考えない、すくなくともまずそれを考える人間なのである。積極的なばあいも消極的なばあいもあるーーつまり後押しするために精神的エネルギーを使うこともあれば、引き摺り下ろすために使うこともあるわけだが、いずれにしてもその考えはつねに勝利か敗北か、栄光か屈辱かといった思想を軸に回転する。ナショナリストは現代史を、大きな勢力の果てしない興亡としてとらえる。そして彼の目には、あらゆる事件が、自分の陣営は上り坂にあり、憎むべき敵は下り坂にある証拠だととらえるのである。
0004風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:41:28.27ID:GKAucBkB0
だがさいごにもう一つ大切な点は、ナショナリズムを単なる成功礼賛と混同してはならないということである。ナショナリストは、いちばん強いものの味方をするという単純な原理は採らない。逆に、いったん自分の立場を決めたあとは、それが事実一番強いのだと自分に言い聞かせて、客観的情勢がどれほど圧倒的に非であろうと、この信念を固守することができるのである。ナショナリズムとは自己欺瞞をふくむ権力願望なのだ。ナショナリストたるものは例外なく、どんな目にあまる不誠実な行為でもやってのけるがーー自分より大きなものに殉じているという意識があるためにーー自分はぜったいに正しいという不動の信念を持つこともできるのである。
0005風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:42:22.36ID:GKAucBkB0
これだけ長たらしい定義をくだしておけば、わたしが問題にしている精神の動きが英国知識人のあいだに広く行きわたっていることを、納得してもらえるだろう。現代の政治に深い関心を持っている人びとは、ある種の問題になると威信ということにこだわるあまり、純粋に理性的な立場でそれを考えることが不可能に近くなっている。例はいくらでもあげられるが、たとえば、英、米、ソ三国のうちドイツの打倒にいちばん功績があったのはどこか、という問題を取り上げてみよう、(中略)こうした問題に頭を悩ますような人は(中略)まずさいしょにソ連か英国かアメリカか、それぞれどこの味方をするかを決め、そのあとで初めて自分の立場の根拠になると思われる主張を探しにかかるのだ。これに類する問題はいくらもあって、正直な答を聞こうと思うなら、そもそもこの種の問題に関心がなく、どのみち役にたたない意見しか言いそうもない人に訊いてみるほかないのだ。
0006風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:42:55.77ID:GKAucBkB0
(中略)
以下にナショナリスチックな思想の主な特徴を並べてみる。

偏執。ナショナリストとあれば、すべて、自己の属する力のある組織の優越性以外のことは、できるかぎり考えもせず、語りもせず、書きもしない。ナショナリストがその忠誠心を隠すことは不可能とは言わないまでも、まずむずかしい。自分の属する組織についてすこしでも中傷されたり、競争相手の組織を暗にほめるような言葉をきかされたりすると、おだやかでない気持ちになって、痛烈に反論せずにはいられないのだ。彼の属する組織がアイルランドとかインドといった実在の国家のばあいには、軍事力や政治的長所ばかりでなく、美術、文学、スポーツ、言語構造から国民の肉体の美しさ、それどころか時には気候や風景、料理といったものにいたるまで、すべてがすぐれていると主張しかねない。
0007風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:43:55.31ID:GKAucBkB0
(中略)
不安定。ナショナリストの忠誠心は、どれほど強烈なものであっても、その対象がかんたんに変わることがある。第一に、これはすでに指摘したことだが、対象は外国であってもさしつかえなく、事実そういう場合がいくらもあるのだ。偉大な国家的指導者や民族主義運動の創始者が、彼らの賛美する国の国民でさえないばあいもけっして珍しくない。まったくの外国人であるばあいもあるし、国籍もはっきりしない辺境出身者のばあいとなればさらに多い。スターリン、ヒットラー、ナポレオン、デ・ヴァレラ、ディズレーリ、ポアンカレ、ビーヴァーブルックなどはすべてこういう辺境の出身である。
(中略)
0008風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:44:25.58ID:GKAucBkB0
(知識人には短い間に忠誠の対象を変えるものも多いが)とくに興味ぶかいのは、この対象が再変更されるばあいもある、ということである。長年にわたって崇拝してきたある国家あるいはその他の組織が突然嫌悪の対象となって、ほとんど間髪を入れずに別の愛情の対象がこれにとって代わる。H・G・ウェルズの『世界史大系』の初版やほぼ同時期の彼の著作では、今日ソヴィエトが共産主義者にたたえられているのにも劣らないくらい、異常なまでにアメリカがたたえられているのだが、この無批判の賛美は、それから数年もしないうちに敵意にかわったのだった。数週間、いや数日のうちに、頑固な共産主義者が同じように頑固なトロッキストに変わるというのは珍しいことでもない。ヨーロッパ大陸でのファシスト運動には大量の共産主義者が参加したが、ここ数年のうちにその逆の現象が起こったとしても、すこしも不思議ではない。ナショナリストにあって終始変わらないのはその精神状態だけであって、感情の対象そのものは変わることもあるし、架空のものであってもさしつかえないのだ。
(中略)
0009風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:45:34.38ID:GKAucBkB0
現代英国のような社会では、知識人といえるような人間が自分の祖国に深い愛着をいだくということはまず考えられない。世間がーーといっても、知識人としてのその人物が意識している一部の世間ということにすぎないのだがーーそれを許さないのである。周囲にいるのがたいてい懐疑的で不満を持っている人間ばかりとなれば、その真似をするか、要するにそれに反対する勇気がないというだけの理由から、自分も同じ態度をとってしまう。そうなると、ではほんとうの国際的視野を持とうとするかと言えばそうはせず、単にもっとも手近な型のナショナリズムも放棄するというだけに終わるだろう。
0010風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:45:41.78ID:GKAucBkB0
しかしやはり何か「祖国」が欲しい。そうなればこれを国外に求めるのは自然な成行きである。そしてひとたびそれが見つかれば、自分ではとうに脱却したつもりでいる、神とか、国王とか、帝国とか、ユニオン・ジャックといったものにつながる愛情に身をゆだねて平然、という思いがけない結果となる。こういう、とうに覆されたはずのさまざまの偶像がふたたび名前を変えて現われ、その正体を認識できないまま、良心のとがめもなく崇拝するということになるのだ。忠誠心の対象を移し変えたナショナリズムというのは、スケープゴートを使うのと同じで、みずからの行いは改めないまま救いを得る、一つの方法なのである。
0011風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:46:04.21ID:GKAucBkB0
現実無視。ナショナリストはすべて、そっくりの事実をいくつ見ても、それら相互の類似性を認めないという特技を持っている。英国の保守党員は、ヨーロッパでの民族自決主義なら擁護するくせに、インドのそれには反対して、これを矛盾だとは思わない。行為の善悪を判定する基準はその行為自体の功罪ではなく、誰がやったかという点であって、拷問、人質、強制労働、強制的集団移住、裁判なしの投獄、文書偽造、暗殺、非戦闘員に対する無差別爆撃、こうしたいかなる無法きわまる行為でも、それをやったのが「味方」だとなれば、まずたいていのばあいは道徳的な意味が微妙に変わってしまうのだ。自由党系の『ニューズ・クロニクル』が恐るべき残虐行為だとして、ドイツ人によって絞首刑にされたロシア人の写真を掲載したことがあったが、その一、二年後にこれとほとんど同じ、ロシア人の手で絞首刑にされたドイツ人の写真を掲載したときには、熱烈に賞賛したのだった。
(中略)
0012風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:46:42.20ID:GKAucBkB0
ナショナリストは味方の残虐行為となると非難しないだけでなく、耳にも入らないという、すばらしい才能を持っている。英国におけるヒットラー崇拝者たちは、六年ものあいだ、ダッハウやブッヘンヴァルトの存在に耳を塞いできた。そしてドイツの強制収容所をもっとも声高に弾劾した人びとのほうは、ソヴィエトにも強制収容所があることをぜんぜん知らないか、知っていてもごくぼんやりとした知識しかないことが珍しくないのだ。何百万という餓死者が出た一九三三年のウクライナの飢饉のような大事件でさえ、驚いたことに英国のソヴィエトびいきたちは、大部分が気づかなかったのである。(中略)
0013風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:46:59.83ID:GKAucBkB0
ナショナリストたちはすべて、過去は改変できるものだと信じている。(中略)こんなことが起こっていいはずがないという気になると、そういう事件はいっさい取り上げず、結局は無かったことにしてしまう。蒋介石は一九二七年に数百人の共産党員を釜茹でにしたというのに、十年もたたないうちに左翼の英雄の一人になった。国際政治の再編成によって彼が反ファシズム陣営の一員となった結果、共産党員を釜茹でにしたことなどは「問題ではない」、いやそもそも事実無根なのではないか、ということになったのだ。
(中略)
0014風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:47:32.70ID:GKAucBkB0
客観的真実の無視という行為を平気でおこなえるのは、世界の一部を遮断して、現実に起こっていることをますます見えなくしてしまうからである。(中略)いろいろな情報源から千差万別の解釈がたえず流されてくるのである。一九四四年八月のワルシャワ蜂起の真相はどうだったのか?ポーランドにドイツのガス室があったという話はほんとうなのか?ベンガルでの飢饉のほんとうの責任はどこにあるのか?おそらく真相をたしかめることはできるはずだが、どの新聞を見てもこうもでたらめな報道ばかりというのでは、一般読者が嘘をうのみにしても、判断をくだせなくても、それを咎めることはできまい。ほんとうはどうなっているのか、誰にもよくわからないとなれば、なおさらかんたんに狂気じみた信念にしがみつくことになる。(中略)
0015風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:47:40.21ID:GKAucBkB0
これにくわえて、ナショナリストというのはたえず権力だ、勝利だ、敗北だ、復讐だといったことを考えているくせに、現実の出来事にはいささか無関心というばあいが珍しくないのである。要は自分の属する組織が他の組織を圧倒しているという気持を味わいたいだけであって、そのためには事実を調べて自説の根拠を確かめるより、むしろ敵をやっつけるほうがかんたんなのだ。ナショナリストの論争はすべて討論クラブの水準のものでしかない。どの論者もきまって自分が勝ったものと信じているのだから、結論など出るはずはないのだ。一部のナショナリストは精神分裂症といってもよく、現実の世界とは無関係な、権力と勝利というまことに幸せな夢を見ているだけなのである。
0016風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:48:14.97ID:GKAucBkB0
(中略)(ナショナリズムのような傾向を指摘すると)偏向のない見方などはありえない、すべての信条や主義にはひとしく嘘と愚かしさと野蛮さがひそんでいる、といった主張も出てこよう。そしてこれがしばしば、政治にはいっさいかかわらない言訳に使われるのである。だが(中略)われわれはーー広い意味でのーー政治に関与すべきであり、自己の選択を明らかにしなければならないのではないか。つまり、たとえ手段が悪であることに変りはなくても、客観的に見てすぐれている主義とそうでないものがあることは、認めるべきなのである。わたしがとりあげたナショナリスチックな愛憎の念は、好むと好まざるとにかかわらず、ほとんどすべての人間の気質の一部になっているのだ。これを除去できるかどうかはわからないが、これに抵抗することは可能なのであって、それこそがほんとうの道徳的努力だとわたしは信じる。
0017風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:48:26.02ID:GKAucBkB0
そのためにはまず、自分のほんとうの姿、ほんとうの感情を知り、逃れられない偏向を認めることである。もしもソヴィエトを憎み、恐れているとして、もしアメリカの富と力を嫉妬しているとして、もしユダヤ人を軽蔑しているとして、もし英国の支配階級に劣等感を抱いているとして、ただ考えているだけではこういう感情を除去することはできない。だが、すくなくとも自分にそういう感情があることを認識し、それによって思考過程が歪むのを防止することはできるはずである。誰もが逃れられない、そしてあるいは政治的行動には不可欠なのかもしれない感情的な衝動には、同時に現実認識が伴わなければならない。だが、くりかえして言えば、これには道徳的努力を必要とする。そして現代の英文学が今日のさまざまの大問題を反映しているとすれば、この努力を払う覚悟のある人間がいかに少ないかがよくわかるのである。
0018風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:50:33.59ID:lSUNjCTO0
読みます
0019風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:50:47.46ID:GKAucBkB0


注:ナショナリストについて→ナショナリズムについて、でした。
0020風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:55:43.11ID:GKAucBkB0
あげ
0021風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 01:57:49.82ID:GKAucBkB0
流石に長すぎるか
0023風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 02:02:36.82ID:Wwf2/kMg0
オーウェルは動物農場でお腹いっぱいやわ
0024風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 02:02:56.60ID:GKAucBkB0
そのうちもっと短くて要約/省略いらんようなネタでスレ立てるかもしれんわ
0025風吹けば名無し
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2022/07/21(木) 02:03:55.50ID:plmnXM850
面白いんだけどこの時間にはきついわ
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