亮太君(仮名)は、手洗いに時間がかかるということで、思春期外来を受診した男子高校生です。家族は両親、亮太君の3人家族です。

亮太君は未熟児で出生し、歩き始めるのも、言葉が出るのも、他の子と比べて遅れていました。とくに言葉の数がなかなか増えず、幼稚園では、他の園児に話しかけられても意味が理解できず、一緒に遊ぶことができませんでした。それで、いつも一人で長時間、ブロック遊びをしていました。

小、中学校時代は特別支援学級に在籍しましたが、クラスでは孤立し、休み時間は一人で図鑑ばかり見ていました。普通学級の児童・生徒からは、バカにされたり、からかわれたりしました。いじめにも遭いました。

高校は普通高校に入学しましたが、「手が汚い」と言って、長時間、手洗いをするようになりました。そのため、高校1年の夏休み明け、お母さんと一緒に思春期外来を受診しました。

初診時の亮太君は、自分が興味のあることを一方的に話しました。

「僕は三国志が大好きです。劉備(りゅうび)が好きだったんですが、今は曹操(そうそう)が好きになりました。だって強いし、大きな国を治める力があったんだから」

と話してくれました。

自閉スペクトラム症と不潔恐怖が主症状の強迫性障害ということで、母親と一緒に2週間に1度の割合で通院してもらうことにしました。

通院を始めてから、明らかになったことがあります。

高校入学後の亮太君は、クラスの女子生徒にあいさつされたり、何げない言葉をかけられたりするだけで、その子のことをすぐに好きになり、「付き合ってほしい」と言っていたというのです。当然のことながら、相手の女子からは断られてばかりでした。次第にクラスの女子からは距離を置かれるようになりました。