一頭のヒグマが今、道東で3年にわたり、人間社会を蹂躙し続けている。

「2019年からOSO18と呼ばれる大型のオスのヒグマが、標茶町と厚岸町で放牧された牛を襲い続けているのです。これまでに57頭が負傷し、そのうち26頭は死亡しています。

最初に被害があってから3年が経つにもかかわらず、OSO18は駆除できていません。これだけ長期間逃げ続けるヒグマなんて、これまで聞いたことがない」(厚岸町水産農政課職員で町営牧場長を務める櫻井唯博氏)

OSO18(以下オソ)とは、北海道庁の釧路総合振興局が、被害を出している個体につけたコードネームだ。最初に被害を及ぼした標茶町オソツベツの地名と、現場に残された足跡の横幅が18cmだったことから名づけられた。櫻井氏が続ける。

「大型の個体が多い北海道でも、オソの体格は群を抜いているとみられます。体重は推定で約400kg、立ち上がって手を上げれば高さは3m近くになるのではないでしょうか。年は10歳ほどと考えられます。

昨年の8月15日にうちの牧場で死亡が確認された牛は、200kgもあるにもかかわらず、背骨を折られ、身体を真っ二つに引き裂かれていました。もはや化け物としか思えない怪力です。牛の死骸を見た時、過去にない衝撃を受けました」