埼玉県の川越駅西口駅前広場に1991年に設置された手形モニュメントの持ち主を川越市が捜している。約1800人の小学生らがタイムカプセルとともに埋め、市制施行100年を迎える今年返還される計画だったが、広場の改修で2011年に前倒しされ、大半の約1400枚が持ち主に戻らないままとなっている。返還期限が12月に迫り、市は「記憶がある人は名乗り出てほしい」と呼びかけている。

手形は川越青年会議所(JC)の事業で設置され、当時の6年生を中心に市内全小学校の児童らが参加した。未来の自分への手紙や写真を容器に入れてモルタルで固め、表面に手形を押して広場に敷き詰めた。縦25センチ、横20センチで、厚さは5センチほど。市制100年となる今年に返還する計画だった。

現在、西口駅前は改修されて、広場は撤去され、歩行者用デッキが整備されている。改修前の11年9月に手形を前倒しで返還する場を設け、今西さんたちが現地で手渡したが、引き取り手が現れたのは約1700枚のうち240枚ほどだった。

残った手形は市が保管し、返還作業を引き継いだ。期限を22年と定め、ホームページなどで受け取りを呼びかけ続けた結果、さらに約60枚が本人の元に戻った。しかし、今も約1400枚は持ち主が見つかっていない。当時の名簿はあるものの名前しかなく、住所が判明しても転居などで連絡を取れないケースが多い。当時設置された広場内での手形の位置もわかるが、外観だけでは誰のものか特定しにくく、名乗り出ても本人のものを見つけられないこともある。

手形は現在、市立教育センター(川越市古谷上)が保管する。約140箱のプラスチックケースに入れられ、2~4階のベランダを占有する状態が続く。市都市計画部は「期限を過ぎた手形をどうするかは決めていない。一枚一枚に思いが込められているので、一人でも多くの方に返したい」と協力を呼びかける。

今西さんは「本人の元に返せなければ、当時の子供たちの思いに応えられない。期限を過ぎても、中身を開封して持ち主を捜し出してほしい」と願っている。