JR西日本の運転士が、ミスで仕事が遅れた1分間ぶんの賃金56円を会社から支払われなかったのは違法だと訴えた裁判で、岡山地方裁判所は訴えを認め、JRに賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。

おととし6月、JR西日本岡山支社の運転士、和田博文さんが岡山駅で回送列車を車庫に移動させる際にホームを間違え、業務を終えるのが予定より1分遅れたことに対し、JRはこの1分間ぶんの賃金56円を給料から減額しました。

これについて和田さんは「違法な賃金カットだ」として去年3月、未払いの賃金と慰謝料などおよそ220万円を求める訴えを岡山地方裁判所に起こしました。

訴えのあと、JR西日本はミスをした社員を懲戒の対象としないよう先月から基準を見直し、裁判でも和解案を示しましたが原告側は「違法性を認めていない」として受け入れず、和田さんは判決を目前にした今月上旬、病気で亡くなりました。

19日の判決で、岡山地方裁判所の奥野寿則裁判長は「原告はミスに気付いて正しい乗車場所に向かい、指示された業務の実現に向けた労働をしているため賃金を請求できる」などと指摘して訴えを認め、JR西日本に未払いの1分間ぶんの賃金56円を支払うよう命じました。

一方、慰謝料の請求については退けました。

判決についてJR西日本岡山支社の須々木淳副支社長は「真摯(しんし)に受け止める。すでに先月以降、懲戒基準の見直しを行っており、今後、裁判で争うことはしない」としています。

同期入社の運転士「よく頑張ったと和田君に言いたい」
和田さんと同期入社の運転士で労働組合の一員として裁判を支援してきた寺居等さんは「やったぞ、よく頑張ったと和田君に言いたい」とことばを詰まらせていました。

そして「当たり前だと思っていても実はおかしい制度はほかにもあると思う。和田君に続いて今度は私たちが声を上げて改善を進め、安全な鉄道を目指したい」と話していました。