技術より、反射神経より「視点」

──梅原さんが言う「視点」というのは、戦略とか、大局観のようなものですか。

梅原:そうですね。ゲームでは、技術も反射神経もそんなに差が出ない。その中でどう勝たなきゃいけないかというと、あとは「一見正しく見えることが正しくなくて、一見正しく見えないことが正しい」といった、他の人が発見できていないようなことを自分で発見して試していくしかないんです。

プレイ中に、周りから見ると「大ダメージくらっちゃった!」という場面でも、自分の視点からいくと「ここのダメージはどうでもいいんだ。あとから取り返せるポイントなんだ」というタイミングを独自でつかんでおく。もちろん、発見しても誰にも言わないですけど、それが自分でわかっていると、差がつけられます。

──その「視点」と関係するかもしれませんが、著作の中に、「目先の小さな勝ちにこだわって大きな勝ちを逃す」という話がありました。

1回の勝ちで終わる人って、ほとんどそうじゃないですか? 他の人を見ていて、「うわ、“小さい勝ち”にこだわったな」と思うことがよくあります。

僕は、結果が出ないときは「ためている期間」だと思っているんですね。

それを感じたのは18歳くらいのときです。18歳の時に新しいゲームをやったんですけど、すでにそれは何作か出ているゲームで、周りを僕が追いかけるかたちでした。

でも僕は、17歳で一度世界チャンピオンになっているから、「俺は別のゲームでも、こんなに早く強くなれるんだぞ!」と見せつけようとして、目先の勝ちだけを追い求めたんです。それで最初は勝てるようになったんですね。
でも、その後が続かなかった。そういうやり方だと、長い目でみたときに本当のトップになれないということを身をもって経験しました。

それ以来、「一番になりたいのなら我慢しなければいけない期間というのが必要だ」と思うようになりました。

「なんでそこで目の前の小さな勝利をとるかなあ……やめなければ地力つけるチャンスだったのにな」っていう人をたくさん見てきたので、それは教訓になっていますね。