結婚当初は他人だった。しかし、25年の銀婚式を迎えるころに、夫にとって妻は“自分の分身”になっている。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、死や離婚など、妻と突然の別れを経験した男性にインタビューし、彼らの悲しみの本質をひも解いていく。

お話を伺った、光岡則夫さん(仮名・60歳・店舗設計会社役員)は、3年前に結婚28年の妻を胃がんで亡くした。

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腰痛をずっと我慢していた妻
「体調が悪いと言い出したのは、娘の結婚式前後でした。娘もデキちゃった婚なのですが、嫁ぎ先はきちんとした家。老舗ホテルで結納を行い、そこで式も挙げました。相手は娘と同じ商社に勤務する先輩社員で、相手側のテーブルには、見たことがある有名人がズラリと並んでいるのに、こっちは庶民的なオジサンとオバサンばかり。妻も『なんだかヘンな式ね』と言いながら、相手の列席者に対してヘンテコなあだ名をつけて私を笑わせようとする。あれだけ食べることが大好きなのに、食べ物には一切の箸をつけていなかった」