世界一まであと2勝だ。WBC日本代表は16日のイタリアとの準々決勝(東京ドーム)に9―3で劇勝。米国で20日(日本時間21日)に行われる準決勝に駒を進めた。侍ジャパンに勝利をもたらした立役者は、3ランを含む5打点の大暴れを見せた岡本和真内野手(26=巨人)だ。かねて〝メジャー志向〟も持つ和製大砲の心はどう動くのか…。流出か、それとも残留か。巨人がかたずをのんで見守っている。

 背番号25のバットがついに火を噴いた。3回、1点を先制してなおも二死一、二塁の場面。最後は左手一本でバットを振り抜き、打球を左翼席へ運んだ。この回だけで一挙4得点。序盤から流れを呼び込むと、2点を返された直後の5回の攻撃でも、相手の反撃ムードを断ち切るかのような2点適時二塁打。日本人最多に並ぶ1試合5打点の大活躍で、5大会連続となるベスト4に大きく貢献した。

 4万人超の大観衆に埋め尽くされた慣れ親しんだ東京ドームでも、日の丸を背負う重圧はあったはず。しかし、つかみどころのない〝すっとぼけキャラ〟は健在だ。お立ち台では何を聞かれても、あまり抑揚のない声で「最高です」を連発する絶妙な切り返し。最後は今後への意気込みを聞かれて言葉に詰まり「え~、もう…最高です」と帽子を取って頭を下げ、インタビューを強制終了させる形でファンの笑いを誘った。

 天然なのか、実は計算高いのか…。何ともミステリアスな岡本和を巡り、大会前から所属する巨人では不安と期待が入り乱れていた。それは、初選出されたWBCで本人のメジャーへの〝あこがれ〟がどうなるのかという点。少年時代に誰よりも衝撃を受けたのが、メジャーの元3冠王でベネズエラ代表として出場したミゲル・カブレラ内野手(39)だった。

 チームスタッフの一人は「和真が家族ぐるみで仲のいい吉田正尚がメジャー(レッドソックス)に行ったということもあるし、球団側も今は『選手の夢を後押しする』という姿勢に変わってきている。メジャー組も集まった初めてのWBCに出て〝俺も〟と考えても全然不思議じゃない。チームは大変なことになるかもしれないけど」と痛しかゆしの表情だった。

 その一方で「和真は頭がいい。見切りも早くて打撃のこととかでいろいろな試行錯誤をするけど、自分に合わないと思ったものはスパッと捨てられる。例えば、次元が違う大谷とかと間近に接してみて〝無理だ〟と思えば、メジャーの夢も捨てるかもしれない」(別のスタッフ)との声もあった。

 球団側は、かつて断固として認めなかったポスティング移籍を2019年に初めて容認。順調にいけば、岡本和が球団の意向にとらわれない海外FA権を取得するのは4年後の27年オフとなる。

 もっとも、岡本和も巨人の近況は気になるようで、ナインの一人は「話はしたけど、今はWBCを楽しんでやっているみたい」という。世界の舞台で侍ジャパンを救った岡本和の心はどちらに傾くのか――。

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