住職不在の空き寺が「居抜き」でベトナム寺に?…日本全国でジワジワ展開する”宗教世界の移民問題”
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 ところで、近年になり急拡大を続ける在日ベトナム人社会の、「文化的拠点」はなにかご存知だろうか。それは寺院だ。ベトナムは社会主義国家なので、統計上は国民の70〜80%が無宗教……ということになっているが、実際は仏教を信じる人がかなり多い。

 複数の証言を総合すると、在日ベトナム人の場合は「全体の6割くらい」が仏教を信じている。日本国内のベトナム寺は、1980年代に日本に渡ったベトナム難民を中心に平成初期から作られていたようだが、最近になり数が増えている。近年の在日ベトナム人の多くは、技能実習生などの出稼ぎ労働者であり、ベトナム寺は異国で故郷の雰囲気を感じられる貴重な場所だ。

山岳信仰の礼拝所がベトナム寺に

 だが、この本庄市の御嶽教の教会は、どうやら15〜20年くらい前に教会長(建物の雰囲気からは「住職」と言いたくなる)が亡くなり、「空き寺」になっていたところ、豪腕尼僧のタム・チーさんが音頭を取って買い取り、ベトナム寺に改造したらしい。

 事実、境内ではベトナムから寄贈された鐘やベトナム語のポスターなどに混じって、平成時代前半までに御嶽教の信者が寄贈した仏像や庭石も多く残る。本堂の巨大な太鼓には御嶽教マークが残り、磬子(読経のときに鳴らす鐘のような仏具)には御嶽教信者らしき日本人の奉納者名が書かれたまま……。つまり、日本社会の宗教施設だった時代の仏具がそのまま流用されている。

 近年、後継者不足によって潰れた古い蕎麦屋や寿司屋の建物に外国人の店舗が居抜きで入り、店内のインテリアにほとんど手を加えず什器もそのまま使用する形で、障子や座敷があるネパールカレー屋や中華料理店を「気合い」で経営しているような例が多く見られるようになった。
大恩寺はそれらの“仏教版”だといえそうだ。今後、地方において後継者不足から無住状態になった神社やお寺が、ベトナム寺や中国寺に改造されて第二の生命を吹き込まれる事例が増えていくかもしれない。