ライブ合成の検証は、アセットの制作が先行されていたシュゴッダムから始まりました。中でも、上堀内監督が一番重要視していたのが、シュゴッダムの広場。この広場のデイシーンが上手く表現できるかどうかは、“アセットを使っての撮影によってこのシリーズが1年間乗り切れるのか”を占うくらい重要でした。デイシーン=日中のシーンというのが重要で、子供番組という特性柄、絵をあまり暗くできないというのが大きい理由でした。おそらく、ほとんどの合成を伴う作品では、絵のコントラストをわざと強くして、暗部を作ることで合成を誤魔化すという逃げ道を前提に考えるはずです。ですが、スーパー戦隊シリーズに、その選択肢はありません。

これが最初に検証テストで作られたシュゴッダムの広場の絵です。もちろん長期間作ってきたアセットの中で人物が動いているだけで感動を覚えたものの、背景の立体感はまだ薄く、陰影を作る作業にも限界を感じたのも事実。上堀内監督とアセットチームの間で、太陽の位置やアセットのテクスチャーの貼り替え
など、色々な方法で「明るさ」と「リアルさ」、そして、「子供番組としての絵作り」のせめぎ合いの作業を繰り返しました。

さらに、美術との接地面やライティングの仕方など、アセット以外の様々な課題が、実際に撮影をすることによってあぶりだされました。それでも、我々がもっていた希望は、クランクインまでにまだ時間があったこと。すべてのスタッフが同じ方向を向いて、かつてない新しい画を作ろうと一致団結していました。

広場に課題が浮き彫りになる一方、シュゴッダムの王の間の絵に我々は気を呑みました。

検証の段階から、この絵を実現できたことで、現場スタッフのテンションは“爆”がつくほど上がりました。放送を見ていただいている皆さんなら、この時点で放送のクオリティと比べても遜色がないことをご理解いただけると思います。つまりこれが、広場のようなエクステリア(屋外)と王の間のようなインテリア(屋内)の質感の違いです。この技術は、絵にコントラストを付けられるインテリアでは凄まじい視覚効果を発揮できるということです。スーパー戦隊シリーズのようないわゆるSF作品において、そのスケール感を表現するのにここまで最適な技術は他にないと言えるかもしれません。そんな冷静な分析なんか当時はできないほど、この絵を見た時のは私自身も爆上がっていたと思います。

そしては、我々はその先もこの「コントラスト」「ライティング」「馴染み」の問題に各国分ぶつかっていくことになるのでした。この試行錯誤がこのあと4ヵ国分! 悩んでいる暇はありません!
次回はンコソパのライブ合成検証の紹介です。つづく(文責:大森 敬仁)