23年7月、台湾積体電路製造(TSMC)の経営幹部がひそかに来日し、経済産業省幹部らと会談した。主な目的は新工場への補助金の“確約”を得るためだが、対象の新工場は24年春にも着工予定の第2工場ではないという。「第3工場までの補助金確約はすでに得られているので、今回の来日は第4工場に関する交渉だったようだ」(事情通)。水面下の話し合いは想定以上の速さで進んでいる。

熊本県内でも立地に関するうわさが飛び交う。ある地元関係者は「現在菊陽町に建設中の第1工場の隣接地はもはや余裕がなく、第4工場からは別の土地を探さなければならなくなるだろう」と語り、皆が地図を広げて思いめぐらす日々だ。

九州フィナンシャルグループの試算では、TSMCやソニーグループの工場新設などによる熊本県内への経済波及効果が、22年からの10年間で6兆8518億円に上るという。正式発表されていないTSMCの第2工場以降の影響は織り込んでおらず、さらなる上振れも期待できそう。関係者のそろばんをはじく手が速くなるのも当然だろう。