ネパール邦人女性失踪事件
1990年10月29日、その年の4月、ネパールを旅行中だった、近畿大学四年の南埜佐代子(みなみの さよこ)さん(当時29歳)が失踪、既に半年が経過していた。
失踪が発覚する一年前、南埜さんはアルバイトでお金を貯め、一人で日本を出国した。東南アジアから中国、中近東やアフリカを旅しており、家族へはほぼ週に1回は、手紙や写真を送り連絡を行っていた。ネパール入りは3月末、そして4月3日、「ヒマラヤ方面へ、4週間くらいの予定で山歩きにでかける」という手紙を家族へ送ったのが最後で、それ以来、消息が途絶えてしまった。連絡が途絶えた家族は南埜さんの身を案じ、現地まで足を運んだ。ヒマラヤ、アンナブルナの登山口の町にあるボカラのホテルに、南埜さんの衣類などが入ったリュックサックが残されたままだった。
南埜さん失踪から4ヵ月後の8月中旬、家族の元へ南埜さんから連絡が入る。しかしその電話は、「苦しい、悔しい……。」と泣きじゃくるばかりで、家族が「どこにいるの?」と問いかけても、泣いているばかりで、電話は一方的に切れてしまった。