この番組には、確かに不自然な点が多数存在している。番組内でその不自然さを指摘する場面はないが、視聴者は少しずつその不自然を摂取していく。この気味の悪さ、一度体験するともう止まらない。休む間もなく後編を観る。不自然に感じていた点が徐々に視聴者の中で線になっていく。その線が伸びれば伸びるほど、おぞましく不愉快で、それなのにどこか爽快感を感じてしまうのだ。 取材として訪れた大家族の裏に、恐ろしい問題が見えてくる。これが確信に変わりそうなところで番組は終了した。そして、この確信を裏づける映像が本編とは別でTVerにて配信されている。 あくまでも、『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』とは別のニュース番組として。これにより本編で感じた不自然が最悪なかたちとして答え合わせできる
この革新的なスタイルがとても魅力的に感じた。これまでに存在したモキュメンタリー(ドキュメンタリー風ドラマ)とは一線を画している。バラエティ番組のポップな雰囲気の中にある気味悪さ。ニュース番組の冷たくてさっぱりとした言葉で完結する残酷さ。これらにより、嫌というほど脳裏に記憶がこびりつく。一連の流れを観ることでひとつのトラウマを植えつけられるような感覚だ。とても不愉快な内容のはずなのに、画期的なエンタメとして快感を覚えている自分がいる。そこまで含めて奇妙な体験だ。