武士の矢並つくろふ籠手の上に霰たばしる那須の篠原

武士たちが、矢の並びを直している、その籠手の上に、霰が激しく降る那須の篠原よ。

山はさけ海はあせなむ世なりとも君にふた心我があらめやも

山が裂け、海は干上がる、そのようにうつろいやすいこの世ではございますが、
わたくしは、陛下の御前に、謀反の心は決して抱きませぬ。

春秋は代はりゆけどもわたつ海の中なる島の松ぞ久しき

春と秋が移り変わり、年月は過ぎてゆく。
だが、大海の中にぽつんと佇む島に生えている松は、変わらず長い年月を生きていることよ。

紅の千しほのまふり山の端に日の入る時の空にぞありける

これぞ、何度も何度も染め上げた真っ赤な染物である事よ。
山の端に、太陽が沈んでいく空の色は。

いとほしや見るに涙もとどまらず親もなき子の母を尋ぬる

かわいそうだ。見ていて涙が止まらない。
両親を亡くした子供が、お母さんはどこと尋ねているのを見ると。