チェイス・フィールドで迎えたカナダ戦
先発リンが5回1失点、打線も勢いを見せて快勝だった
スタジアムに響くファンの歓声、どこからか聞こえる「今回も優勝だな」の声
笑顔で帰り始める選手達の中、トラウトは独りベンチで泣いていた
エンゼルスで手にできない栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト…
それを今のアメリカ代表で得ることは最高と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ…」トラウトは嬉し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、トラウトははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って天気予報を見なくちゃな」トラウトは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、トラウトはふと気付いた

「あれ…?お客さんがいる…?」
ベンチから飛び出したトラウトが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりのエンジェレノだった
千切れそうなほどにサムズダウンが投手に送られ、地鳴りのような観客のため息が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「マイク、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったトラウトは目を疑った
「ウ…ウォード?」 「なんだ野球マシン、居眠りでもしてたのか?」
「ネ…ネビン監督?」 「なんだマイキー、勝手にネビンをクビにしやがって」
「モレノさん…」  トラウトは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:ウォード 2番:トラウト 3番:大谷 4番:アデル 5番:レンフロー 6番:ドルーリー 7番:レンヒーフォ 8番:スタッシ 9番:ウルシェラ
暫時、唖然としていたトラウトだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てない…勝てないんだ!」
レンドンからグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走するトラウト、その目に光る涙は嬉しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ドジャースへ移籍した大谷が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った