2014年3月に静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌元被告(87)に対し、地裁決定に続き再審開始を認めた13日の東京高裁差し戻し審決定は、弁護側の実験などの信用性を認め、最高裁から宿題として課された「科学論争」に答えを出した。一方、再び証拠の捏造(ねつぞう)を指摘された検察側は特別抗告する構えを崩さず、審理のさらなる長期化が懸念される。

科学論争 弁護側が「完勝」
 「今回の高裁決定は相当踏み込んだ無罪判決に近い内容だ。検察には不服を申し立てる理由がないはずだ」。袴田さんの弁護団は高裁決定が出た約1時間後に東京高検に特別抗告を断念するよう要請した。高検は事務官とみられる職員が対応し「検事に伝えます」と話したという。

 一方、裁判所から「証拠の捏造」を指摘されたことに法務・検察当局では衝撃が広がった。ある検察幹部は「これだけの事件で組織としての責任がある。特別抗告するかしないかはこれから熟慮を重ねるが、簡単に『そうですか』と納得するわけにはいかない」と話した。

https://mainichi.jp/articles/20230313/k00/00m/040/252000c