「────おはようございます。6時のニュースをお伝えします」
「……いけね」

 ぼんやりとテレビを眺めていた三島岳(みしまたける)は、
ニュースキャスターのその声で夜勤があと2時間ほどで終わることを
これまたぼんやりと理解した直後、慌てて目の前のパソコンに向き直った。

 ウトウトしてしまい途中になっていた日報の続きを手早く打ち込み
印刷すると、バインダーに綴じてカバン型の書類ケースに収める。

 「おーす」

気の抜けた声とともに先輩隊員が仮眠室から出てきたので
挨拶を返し、軽く掃除機をかけると、再び監視モニター前の事務椅子に座った。

 「異常は?」
 「ありません」

  毎日のように交わされるごく短いその会話は、
 日本がある冬の日の朝を平和に迎えられた証でもあった。

 そして2時間後────岳は足を滑らせ死んだ。