急性ニコチン中毒の治療(表3)

中毒症状を有する場合は,気道確保,酸素投与,輸液などの基本的な治療を行う.タバコの嘔吐中枢刺激作用で嘔吐することが多いことと,中毒症状でも嘔吐することから催吐は不要といわれている.初期からけいれんを生じることもあるので,催吐は行わない方が望ましい.水や牛乳を飲ませて希釈を期待する方法もあるが,かえって胃内での溶出を促進する危険性があり,また,嘔吐で飲めないことが多い.
胃洗浄や活性炭投与については,重症度と誤食後の経過時間で考慮する(急性中毒の一般的治療に準ずる).
強制酸性利尿が有効ともいわれているが,ニコチンは代謝が早く(主な代謝産物はコチニン)すみやかに尿中に排泄されるのであえて施行する必要はない.分布容量が大きいので血液浄化法は無効である.
特異的な解毒薬や拮抗薬はないとされていたが,欧米ではmecamylamineというニコチンの拮抗薬が使用されている.ただし,経口製剤であるため,嘔吐している間は投与できない.徐脈などの副交感神経刺激作用には硫酸アトロピンを投与する.