――インタビューをしていると、勅使河原さんは受け答えも非常に丁寧で大変礼儀正しい印象を受けます。昔暴走族に入って荒れていたとは到底思えないのですが……。

 勅使河原 むしろ暴走族に入っていたから、そうなったんじゃないでしょうか。文字通り、礼儀を先輩に叩き込まれましたから(笑)。

 礼儀もそうですが、暴走族にいたことが、ボクシングに生きた部分もたくさんあります。「どんなに恐ろしい局面でも向かっていかなきゃいけない」というあの教えも、めちゃくちゃボクシングに生きました。

 中2~3の頃にはこんなことがありました。うちの総長と2人でいる時に、50人の敵に囲まれ、ボコボコにされたことがあったんです。地元の夏祭りに行った時に、総長と歩いてたんですよ。そしたら、気付かぬうちに、別の暴走族の輪の中に入っていた(笑)。祭りの時、暴走族は特攻服を着て集まって、声出しみたいなことをやるんですね。それで、50人ぐらい集まって声出ししてるところに、何も知らない僕らが、のこのこ入っていっちゃった。

 当然、「お前ら、うちの陣地でなにやってんだ」ってことになった。でも、僕らは、たった2人でも引いちゃいけませんから。こっちも、「何だ、やんのか?」とか言ってね。僕は、目の前のヤツの胸ぐら掴んだぐらいで、ほとんど何もできませんでした。掴んだヤツに膝蹴りされてしまい、周りからもめちゃくちゃに殴られ続けた。奇跡的に、僕は大事に至るような深手を負いませんでしたが、一緒にいた総長は気の毒でした。

 しばらくすると、その暴走族のケツ持ちのヤクザが来てしまってね。総長だけをタコ殴りですよ。僕はただ見てることしかできませんでしたけど、あれは酷い光景でした。

 そんな経験もしましたので、ボクシングで、どんなアクシデントがあっても、「大丈夫、いける」と思えた。試合をしていると、絶対絶命の局面って結構あるんです。そんな時にも、弱気にならないで向かっていけたのは、間違いなく暴走族時代のおかげです。どんなに辛くても、「最悪、反則してでも勝ってやる」ぐらいに思ってましたから。