「こちらはメーカーとの関係で、値引きができないんです」

 大阪府内のある家電量販店。ドライヤー売り場の店員が客に説明していた。店員と客、両者の目線がとらえていたのは、1台2万~3万円ほどするパナソニックの高級ドライヤー「ナノケア」だった。

 「現金値引き」「ポイント還元」といった言葉が飛び交い、自他ともに安売りに強みを見いだしてきた家電量販店で、なぜ値引きができない商品があるのか。それも、おなじみのパナソニック製品で。

同社が2020年から本格導入を始めた、家電取引の戦略転換にある。

 「アップルストア」のようなメーカーの直営店をのぞくと、一般的に家電量販店などの小売店は、メーカーから商品を買い取って客に売っている。売れ残って在庫を抱えるリスクは小売店が負う半面、店頭でどんな値段をつけるかは自由だ。価格決定権は小売店にあるからだ。 

独禁法に詳しい平山賢太郎弁護士は「従来からある委託販売とほぼ同じだ。米アップルのiPhone(アイフォーン)など、商品力の強い商品は量販店でもほぼ値下げせず売られている。パナソニックも商品力が問われることになる」と話す。

https://www.asahi.com/articles/ASQ7T728MQ6SPLFA005.html