1960年(昭和35年)9月19日、群馬県警察谷川岳警備隊に一ノ倉沢の通称「衝立岩(ついたていわ)」と呼ばれる部分で、救助を求める声が聞こえたとの通報があり、警備隊が現場に急行したところ、衝立岩正面岩壁上部からおよそ200m付近でロープで宙吊りになっている2名の登山者を発見した。

2名は、前日に入山した神奈川県横浜市にある蝸牛山岳会の会員で、20歳と23歳の男性だった。発見時、遠方からの双眼鏡による観測で2名が既に死亡していることが確認された。両名死亡のため遭難原因は不明だが、行動中だった方が何らかの理由でスリップし、確保側も支えきれず転落したものと推測されている。
現場となった衝立岩正面岩壁は、当時登頂に成功したのは前年8月の1例が初という超級の難所で、そこに接近して遺体を収容するのは二重遭難の危険が高く、不可能と思われた
当初は所属山岳会の会員らから、長い鉄棒の先端に油に浸したボロ布を巻いて点火した「松明」でロープを焼き切る案が出されたが、岩壁からロープまでの距離も長く、検討の末に不可能と判断された。
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