東京都港区の増上寺で行われた安倍晋三元首相の葬儀では、自民党の麻生太郎副総裁が弔辞を読んだ。出棺前には妻昭恵さんが安倍氏に頰ずりする場面もあったという。参列者が明らかにした。

 麻生氏は弔辞で「外交についてセンスと胆力で、国際社会での日本の存在を高めた。戦後最もすぐれた政治家だ。天国で(父)晋太郎さんに、胸を張ってやってきたことを報告すればいい」と語った。また「(安倍氏と)冗談を言いながらゴルフをやり、大いに酒を食らった。楽しい思い出ばかりだ」と振り返り「あんたが私の弔辞を読むことになっていたんじゃないのか。大変つらい」と話した。

 昭恵さんは喪主のあいさつで「これほど優しい人はいなかった。いつも私のことを守ってくれた。政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」と話した。昭恵さんは出棺前、安倍氏のひつぎに花を手向けた後、数分間頰ずりをし、安倍氏との別れを惜しんだという。

 葬儀は近親者による「家族葬」として執り行われたが、岸田文雄首相や経団連の十倉雅和会長、台湾の頼清徳副総統ら安倍氏にゆかりのある政財界の要人や外国政府関係者らが参列した。【東久保逸夫】