「サイボーグゴキブリ」がヒーローとなる日
https://news.yahoo.co.jp/articles/56ef68b0837cdcc05680759765b1dab5208f5e4c

昆虫の遠隔操作――具体的にはどうするのでしょう? 
 ゴキブリは力強い手足とともに、様々な感覚器を備えています。それを使って、どういう経路を、どのように這っていったらいいかを判断する脳もあります。遠隔操作は、いうなればそうした神経系の「ハッキング」です。

 森島さんらはマダガスカルゴキブリの背中に、重さ5グラムくらいのチップと電池を載せました。チップには電波の送受信機や電気刺激回路、ジャイロスコープなどが組みこまれています。そこから延びた電極を、左右の触覚と「尾葉(びよう)」につなぐのです。

 尾葉はゴキブリのお尻から出ている一対の突起で、気流を感じる器官です。新聞紙を丸めて力まかせに黒い虫をたたきつぶそうとしても、めったに成功しません。それは新聞紙によって起こされる風を、いち早く尾葉で感じ取って逃げるからです。その反応速度は、人間の10倍とも言われています。

 なので余談ですが、ゴキブリを退治したいなら風を起こしにくい、ムチのようなものを使ったほうがいいようです。筆者の学生時代の友人は、遊び半分にゴキブリを狙って輪ゴムを飛ばしていました。今、思えば、それも理にかなっています。

 尾葉を電極で刺激すると、マダガスカルゴキブリは風が当たったとかんちがいして前に進みます。そして左の触覚を刺激すると、左側に障害物があるとかんちがいして右へ、右の触覚を刺激すると左へ曲がります。両方の触覚を同時に刺激すれば止まります。アクセルとハンドル、ブレーキ代わりになるわけです。

 このようなシステムを使って、森島さんらはバングラデシュからインターネット経由で、大阪のゴキブリを操作することにも成功しました。専用のインタフェースが用意され、海外の操作者は実験台の映像やジャイロスコープが示す角度などを見ながら、ゴキブリをスタート地点からゴールへと導いていきます。最初は少し手間取る感じでしたが、途中からは行かせたい方向へ、おおむね真っ直ぐ導いていました。

 森島さんらは、このような「昆虫サイボーグ」の利用法として、災害時の人命救助を考えています。地震などによって建物が倒壊し、瓦礫の下に埋もれてしまった人を発見するのには、とくに向いているでしょう。

 現在、そのような状況では、よく災害救助犬が活躍しています。足元の不安定な現場を駆けまわり、自慢の鼻で人間の存在を見つけだす犬は、まさにヒーローと言えます。とはいえ重なったがれきの、狭い隙間までは入っていけません。深く埋もれてしまったような人を探すのは困難です。

 いわゆる「レスキューロボット」も、今は犬や猫より大きなものがほとんどです。その点、ゴキブリくらい小さなロボットなら、どこへでも入っていけます。