>>10
記者の携帯電話が鳴った。
見知らぬ番号からの電話に出ると、関西訛りがある若い男性の声がした。
「あの、吉田です……吉田です」
早口でこう名乗る男性に対して、最初は見当がつかず、何度か用件を尋ねていると
「手紙をいただいた吉田隆之介です」
と、震える声が聞こえた。「黒瀬深」アカウントの運営者である吉田隆之介その人だ。思わぬ形で、電話越しでの直接取材が始まった。
「あの…懇願します。僕のプロフィールを出さないでほしい」
――失礼しました。手紙を読んでいただけたでしょうか?
「あの……懇願します。僕のプロフィールを出さないでほしいと懇願します。これは報道されるのでしょうか?」
――そのつもりで取材をしております。インタビューを受けていただけないでしょうか?
「いただいた手紙と取材への対応については弁護士と協議します」