ソフトバンクの孫正義社長は、在日韓国人という生い立ちから差別を受け続けてきた。
幼少期は実生活で攻撃を受け、幼稚園時代には日本人の子供から「朝鮮人!」とののしられ、投げつけられた石で頭から血を流すこともあった。
今でもネット上などで罵詈雑言を浴びせられ続けている。

日本社会の中で生きていくのには、安本と名乗ったほうがいい。今の芸能人とかスポーツ選手でもいっぱい日本名を名乗って活動している人がいる。
それを非難するわけではないけど、あえて僕がわざわざ逆風の中を孫という名字を親戚一同の中で初めて使ったんだ。

日本にいて今日の今日ですらまだ若干残ってはいるけど、在日という中で、様々なやっぱり目に見えない、言うに言われぬハンディキャップがあるんだよ。

俺は小学生、中学生の時に自殺したいぐらい悩んだんだ。本気で自殺しようかと思ったぐらい悩んだ。それぐらい差別、人間に対する差別というのは、つらいものがあるのよ。

なぜ僕があえて親族、おじさん、おばさん全員の反対を押し切って1人だけ孫と正式に名乗ったのか。

そうやってつらい思いをしている在日の子供たちに対して、1人でもいいから自分の先祖代々の名前を堂々と名乗って、
様々なハンディキャップがあったとしてもそれでもね、それなりにやれるんだという事例を一つ示したいと考えたから。
それで希望を得る若者が1人でも100人でも出れば、それは「差別反対」と言って、何かプラカードを出して言うよりも100万倍効果がある。

差別反対なんて言わなくたって、孫と堂々と名乗って、堂々と逆風の中で仕事して、事業して、それなりになればそれはもう100万語しゃべるより、力説するより、
そういう青少年に希望を与えられるんじゃないかと思って俺はあえて名乗った。

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/052400004/