「今日もテレ東進出に向けていい配信ができたな…」
大金はたいて建てた防音室で一息つき、YouTuber加藤純一はマウスを手に取り【かっさん】加藤純一ID無しスレを開く。
自らの界隈の動向をチェックする日課の時間だった。
「そういえば今日はぺこらのショートがあったはず…」
ぺこらのYouTubeチャンネルを開く。

(なになに…場所は博多…再生回数は…たったの3万!?)
思いもよらぬ結果にニチャァ…と陰湿な笑みを浮かべ、タブを切り替えID無しスレを開いた。
「『ぺこらのショート3万w、弱すぎて草』っと」
やはり無しスレでアンチと野うさぎをバカにするのが何よりの至福だ。
すぐに梨民が噛みついてくるはず、久々におちょくって遊んでやろう。
しかし野うさぎの反応は加藤純一の想像とは違ったものだった。
「べこらってなに?」
「たしか高田健志とかいう無名のこと」
「そんなことよりサロメの配信始まるぞ」
トトトトゥーン
Chromeからプッシュ通知が表示される。
ぺこらの動画投稿を告げるものだった。
さっそく低評価を押し無しスレに貼り付ける。
『おいぺこらの人狼動画きたぞ』
「サロメきたーー!」
「desuwa!desuwa!」
「こんるるしていい?こんるるするよ?」
加藤純一の書き込みに反応する人間はいなかった。
かつて自身と並び配信をし、神とまで謳われたかつての仲間の話題に関心をもつ者は皆無であり、
絵畜生風情のゲーム配信の実況でそこは埋め尽くされていた。
加藤純一の目から一筋の雫が溢れ落ちる。
『野うさぎ発狂で草』『ぺこら視聴者数少なw』『冷めチキぶっさw』

書き込みだしてからとうに1時間は過ぎ、
それでも涙に顔を歪め夢中でキーボードを叩いている主人の姿を
二匹の犬と一匹の猫は不思議そうに眺めていた。