私立松江西高校1年の青山咲貴(さき)さん(15)は入学して間もない4月13日の午後6時半ごろ、帰宅途中の市道沿いの歩道で、3歳の男の子が一人でいるのを見つけた。薄暗く、家路を急ぐ車などで交通量が多い時間帯。男の子は、困ったような表情で周囲を見渡しながら、道路を横切ろうとしているように見えた。横断歩道までは少し距離がある。「危ないな」。とっさに男の子に駆け寄ると、車道に飛び出さないよう、手を伸ばして制止した。

「どうしたの? お母さんは?」。そう聞くと、男の子は近くのスーパーの方を指さした。すぐそばに母親がいると思ったが、姿が見えない。名前が分かるものも身に着けておらず、母親の名前も言えなかった。再び道路を渡ろうとする男の子の手を握って周辺を捜したが、母親は見当たらず、1・5キロほど離れた最寄りの交番を目指すことにした。

青山さんの自宅は、男の子を見つけた場所からすぐ近くで、交番の場所も知っていた。その道すがら、男の子が不安にならないように「名前は?」「おうちはどこ?」などと話しかけ、気持ちを和ませようと努めた。途中で男の子が歩くのを嫌がると、おんぶして交番へ向かった。

警察官に男の子を預けて帰宅すると、その夜、警察から男の子が無事に家族の元へ帰ることができたと連絡があった。「ほっとしました。小さな子どもが連れ去られたというニュースを聞いたことがあるので」と青山さん。県警によると、男の子は家族が目を離した隙に家の外に出ていたといい、家族が周辺を捜していたという。

5月13日、松江署で鍜冶幸正署長から感謝状を受け取った。「人の役に立ててよかったです。でも、私は当たり前のことをしただけだと思う。その場にいたら、他の人でも同じことをするんじゃないかな」