体の反応に混乱「被害を認識できない」

被害によって体にも心にも大きなダメージを受けたダイスケさん。しかし、被害について当初は「レイプだと認識できなかった」と話してくれました。
もともと男性がレイプの被害に遭うということを考えたことがなかったことに加えて、被害時に自らの体が反応したことをどう理解すればいいか分からなかったからだと言います。
望まない性的な行為であったにも関わらず、性器や肛門を刺激され、ダイスケさんは勃起し射精しました。そうした体の反応によって、大きな混乱に陥り、被害と認識することができなくなったのです。

ダイスケさん(仮名)
「自分の中では非常に苦痛だったし、自尊心を傷つけられることだったので、本当につらい状況だったという認識なんですけれど、体の反応としては、快楽が得られたあとのような反応、つまり、勃起して射精しているような状況だったので、まったく自分の中でも理解できないというか、自分の気持ちが本当に性行為をやめてほしかったのか、それとも受け入れていたのか、その辺が本当に混乱して。 (被害時に)射精した瞬間、やっぱり正直言うと、気持ちいいという感じがあったので。気持ちいいと思ったんだったら、自分はそれを受け止めていたんだろうという気持ちがあった。体で感じた感覚と心で感じた痛みっていうのはすごい乖離しているので、非常に混乱したっていう感じですね」
「自分を許せなかった」と繰り返し語ったダイスケさん。被害に遭ったという認識を持てず、自らを責め続けてきました。そして、この経験を誰にも話すことができず、一人で抱え続けてきたのです。

ダイスケさんが、自らの経験を性被害だと明確に認識するようになったのは、「“性暴力”を考える」の記事がきっかけでした。

レイプの被害に遭った男性の記事を目にしたのです。さらに、専門家のインタビューで印象的な一文がありました。
「熱いものを触ったときにやけどをするのと同じように、性器を触られて勃起したり射精したりするのは、あなたの意思とはまったく関係がない。あくまでも自然な体の反応。だから、あなたがおかしいわけではないんです」
こうした情報を得たことで、体に起きたことを理解し、自分を責める気持ちも軽減されたと言います。

ダイスケさん(仮名)
「自分が受けた行為がどういうものだったか、ほかの方のエピソードを通じて理解することができて、自分は男性による性被害を受けたんだと、男性も性被害を受けることがあるんだということが、一番理解につながったというか、自分を受け止められるきっかけになったと思います。 その中で、自分が自分に対して嫌悪感を持っていた射精する行為っていうのが、生理的な反射によって起こったことで、自分の思いとは違うということが理解できて、自分をやっと許せるように思いが変わってきたという感じです」